garden, architecture, art

旧朝倉家住宅

「ヒルサイドテラス」と「旧朝倉家」の関係

高級住宅地として知られ、大使館や外国人住居など、静かで洗練された印象の強い代官山の町の顔として欠かせないのが「ヒルサイドテラス」です。昭和40年代より常に話題の店舗が出展し、現在は蔦屋代官山など、ウインドーを見るだけでも心躍ります。

この「ヒルサイドテラス」発祥となったのが「旧朝倉家住宅」。地元の名士・朝倉氏によって大正自体に建設されました。旧朝倉家住宅は現在、渋谷区の管理下で重要文化財に指定され、一般公開されています。

旧山手通りから一歩入った場所に静かに鎮座している「旧朝倉邸」をご紹介いたします。

朝倉氏の横顔

朝倉家はかつて甲州の武田家に仕えていた武士で、江戸時代の1700年代に武蔵国渋谷に定住しました。江戸末期には水車を所有し、この水車の収益で明治以降、渋谷周辺の土地を買い集めて大地主になります。

その後、養子となった朝倉金蔵が精米業を営み、朝倉家を更に発展させました。

この建物を建てた朝倉虎治郎氏は東京府議会議長や渋谷区議会議長を歴任しました。

朝倉家売却の危機

関東大震災や戦禍を逃れた朝倉邸は、戦後は朝倉氏から売却され、国が所有し経済企画庁の会議所などとして使用されていましたが、2002年に閣議によって売却が決定。

元の持主である朝倉氏とヒルサイドテラスの設計者、槇文彦氏が中心になって保存運動が行なわれ「旧朝倉邸と庭園の保存を考える会」を立ち上げました。

その結果、2004年に「大正の歴史の香りを残す和風住宅として、その庭園とともに価値がある」とされ、国の重要文化財に指定され、保存が決定しました。

大正期の和風建築を堪能

1919年に建築された朝倉家は、都心部に残る数少ない関東大震災以前の住宅で、凝ったデザインは自由な遊び心溢れる大正時代の息吹が随所に感じられます。

大正期は、明治と昭和の間の15年間です。短い時代ですが、19世紀に西洋で展開したロマン主義の影響を受け、東洋と西洋が混ざり合った独特の文化「大正ロマン」を生み出しました。

応接間

玄関脇の応接間は書院造りの和室で、桧柾目板を多く使用した長押が室内を回り、襖や板欄間等には優美な日本画が描かれ、正統派和室デザインを見ることができます。

木製の引き戸レール

廊下のガラス戸を滑らせるレールに、木製のレールを使用し、細部にもこだわりを感じることができます。

和洋折衷

玄関脇の唯一の洋間は日々の来客への応対や事務のための洋間です。

折上格天井、シャンデリアを吊るための木製ブラケット部に施された美しい彫刻、一枚板を使った引違い戸など丁寧に仕上げられています。

杉の間

最大の見どころは建物の奥の西側の先にある三つの座敷から構成される「杉の間」です。

東側の角の一間は書院風ですが、奥の二間はくだけた意匠をもつ数寄屋風の座敷としています。

この数寄屋風座敷の一間は、「杉の間」の由来ともなった、杉材の木目を荒々しい“板目”でのみで構成した「うづくり」と呼ばれる、木を磨いて木目を浮き立たせる手法が多く取り入れられ、こだわりと遊び心が感じれます。

この、杉の間から眺める庭園は見事です。緑鮮やかな春から夏も清々しいのですが、やはり紅葉の季節は圧巻です。

濃い緑に覆われたた和風庭園

季節ごとに美しい表情を見せる回遊式庭園は玄関前の前庭、屋敷内の坪庭、敷地南側に広がる主庭の3つに分かれています。

特に主庭は崖にあることから、起伏のある地形を利用し、借景を取り入れ、かつては富士山や目黒川、周囲の田園風景が望めました。主屋からは額縁に入った絵を見るように自然な形の景観や、見事な石灯籠や景石などが楽しめます。

附属屋(車庫)

1919年の建設当初から車庫がありました。市街地化が急速に進む当時の東京で、自動車は必須の道具となっていきました。屋根を支える洋風の構造、コンクリートの土間、両妻の内側の波形鉄板など、普及し始めた頃の車庫の仕様を良く示しています。近年痕跡調査により復元しました。

ヒルサイドテラス

戦後、所有していた土地の大部分を失い、本宅も相続税支払いの為に売却を余儀なくされました。1967年に建築家・槇文彦氏と出会い、残った土地で後のヒルサイドテラスとなる「代官山集合住宅計画」を立案させたのです。

この建築空間と、ここで実施されるさまざまなプログラムが「代官山」ブランド礎を作ったのです。

これからも代官山のランドマークとして

大正期の上品な遊び心溢れる「旧朝倉邸」と、景観を生かしながら開発された「ヒルサイドテラス」は、上品な代官山の顔です。不便さが良さでもあった代官山ですが、現在は東横線の延伸でとても便利になりました。

ショッピングやデートの合間に、旧朝倉邸で大正時代にタイムスリップしてはいかがでしょうか。

Auther:Mamiko Kusano

CREAZIONE Co.Ltd. Director
From Tokyo
2006 Established CREAZIONE Co. Ltd. I mainly work on branding, digital branding, space design, and furniture design.

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